Harpist 吉野直子 Naoko YoshinoHarpist 吉野直子 Naoko Yoshino

NAOKO短信[ 2016年以前 ]

2016年~2014年

時が経つのは早く…2016年4月18日

時が経つのは早く、東京は春本番を迎え、もう少しするとゴールデンウィークという時期になりました。今日は、今年2度目のヨーロッパに向かう飛行機の中でこの原稿を書いています。

今年1度目のヨーロッパは3月のフランス行きでした。昨年CD録音や日本ツアーが実現したフランスのオーヴェルニュ室内管弦楽団の本拠地クレルモン=フェランでの定期演奏会に出るための、2週間ほどの旅でした。指揮者のロベルトさんとオーケストラの皆とは、約3ヶ月ぶりの再会。今回も、本当に楽しい音楽作りの日々を共に過ごすことができました。3月はちょうど、彼らとのCDのヨーロッパでの発売時期と重なっていたこともあり、旅の最後にはパリのラジオ・フランスで、朝の音楽番組にロベルトさんと一緒に生出演をし、朝の8時過ぎからスタジオでライブ演奏するという経験もしてきました。(こんなに朝早くから本番をするのは、きっと生まれて初めてだったのでは、と思います!)

今日からのヨーロッパは、ウィーンとポーランドへの旅です。ウィーンは、プライベートの用事で立ち寄るのですが、大好きな街との久しぶりの再会を楽しみにしているところです。その後のポーランドでは、ポーランド国立放送交響楽団とコンチェルトを2曲演奏する予定です。コンサートが行われるのは、今回初めて訪れる街・カトヴィツェ。初めての土地で、またどんな新しい出会いが待っているのか、ワクワクしています。

そして先週には日本の軽井沢で、自主レーベル grazioso の2枚目のレコーディングを無事に終えました。レコーディングは昨年の1枚目の時と同様に、素晴らしいスタッフに支えられて、とても充実したものになりました。このCDの発売は、今年の末か来年の初めになる予定ですので、楽しみにしていただければ、と思います。

イメージ パリのラジオ・フランスにて生演奏中です
イメージ クレルモン=フェランのCDショップにて
イメージ 先週は、こんな素敵な場所で
レコーディングしていました

デビュー30周年記念2016年2月13日

早いもので新しい年になってから、ひと月半が過ぎました。
立春も過ぎた東京は、少し季節はずれの暖かい週末を迎えています。

先週末は、サントリー・ブルーローズでの、デビュー30周年記念のリサイタルでした。
当日は たくさんの温かい聴衆の皆様と一緒に、ステージの上で充実したひと時を過ごさせていただいたことに、心から感謝しています。

リサイタルの少し前には、久しぶりのソロCDも発売となりました(このたび、自主レーベルを作りました)。 今回のリサイタルとCDを通して、今までの時間を振り返ると共に、これから更に深く、そして豊かに、ハープや音楽と向き合っていくことができれば、と願っています。

リサイタル後には ちょっとした息抜きで、数日間の国内の旅に行ってきました。瀬戸内海の島でのんびり過ごし、美味しい料理を堪能し、日本の豊かな自然と今でも息づく文化と歴史を味わうことができました。このような平和な時間を過ごせることに感謝すると同時に、今年もまたハープを通して、たくさんの素敵な出会いができますように、と思っています。

イメージ 瀬戸内では時間の流れがゆっくりです
イメージ 今回の旅では大きな景色をたくさん見ました

新しいコンチェルトのCD2015年12月1日

ここのところ、急に空気が冷たくなってきました。いよいよ今日から12月です。

今年の後半は、数多くの嬉しいコンサートの機会に恵まれただけでなく、久々に録音した新しいCDのための準備などに、多くの時間を使いました。
その新しいCDは、この短信を書いているちょうど今頃、発売になっているはずで、昨年の夏にこの短信でも書いた、オーヴェルニュのオーケストラと録音したコンチェルトのCDです。今年の6月にオーヴェルニュの州都・クレルモン=フェランで行った録音は、素敵な彼らとの本当に充実した共同作業でした。
CDの発売記念でもある彼らとの日本ツアーが、いよいよ今週 始まります。2日の名古屋公演から始まり、7日の大阪まで4公演あります。ひと足早いクリスマスコンサートで、多くの皆様にホールでお目にかかれることを、楽しみにしています。

今年は、イスラエルのコンクールで賞をいただいてから30年という節目の年でもありました。自分では、30年も経ったなんて信じられない気持ちで いますが、その記念としてのリサイタルを、来年の2月にさせていただくことになりました。その直前には、こちらもまた久しぶりのソロのCDが発売になる予定です。ソロのCDは、今回新しく立ち上げた自主レーベルでの制作となります。1枚のCDが出来上がるまでに、これだけ多くの作業があることを あらためて認識していますが、その大変さを楽しみながら、今は皆さまにお披露目できるための準備を進めているところです。

イメージ 6月、オーヴェルニュでのレコーディング風景
イメージ 録音したものをチェックしています
イメージ 指揮者のロベルトさんと
今回のツアーのための取材を受けました

今日からもう3月!2015年3月1日

2015年になって、初めての短信のお便りです。
今日からもう3月! 東京は今日は、冷たい雨の一日でしたが、いろいろなところに確実に春の気配が感じられるようになってきました。

先月は、日本での仕事があまり忙しくなかったこともあり、ドイツに10日間ほど行ってきました。主な目的は、ヨーロッパに置いてあるハープの「ご機嫌うかがい」のためでしたが、練習の合間には、街をぶらぶらしたりする時間を楽しみました。
ドイツに着いた週末は、たまたまカーニバルの時期と重なっていて、泊まっていたボンの郊外のホテルの前の広場は、パレードを見る人たちでいっぱいになりました。ケルンやボンに比べると、ローカルで規模の小さなパレードでしたが、カーニバルの雰囲気をじゅうぶん楽しむことができました。思い思いの仮装で参加する人たちや、パレードの山車から投げられるお菓子をバケツいっぱいに拾って帰る親子連れなど、みんなとても楽しそうで、その日は町全体がハッピー・オーラに包まれているような感じでした。

今度の土曜日には東京・晴海の第一生命ホールで、子供と一緒に楽しめる「子どもを連れてクラシック」コンサートがあります。4歳以上から楽しめるコンサートで、後半は絵本の朗読に合わせて、演奏をします。絵本の選定や、絵本に合う音楽選びも担当させていただいた今回のコンサート。当日は、素敵な共演者の皆さんと一緒に、楽しいコンサートにできれば、と思っています。

イメージ パレードの始まりです!
イメージ ボンのベートーヴェン像の前で
イメージ ドイツにも春の便りが届き始めていました

フランスのオーヴェルニュから2014年8月19日

この短信、ずいぶんご無沙汰してしまいました。
今日は、フランスのオーヴェルニュ地方のクレルモン・フェランからのお便りです。

この夏は久しぶりに、ヨーロッパで長い時間を過ごしています。
今回の旅は7月末の、スペインの巡礼の地・サンティアゴ・デ・コンポステーラから始まりました。(…と言うよりも正確には、ドイツのボンの近くに置いてあった私のハープをレンタカーに積みこみ、そこからサンティアゴ・デ・コンポステーラまで2000キロのドライブをするところから、今回の旅が始まりました!)
サンティアゴでは、新作初演を含む細川俊夫さんの作品を中心としたコンサートをやらせていただきました。ヨーロッパで最も歴史が古い大学の一つであるサンティアゴ大学の主催で、あたたかい雰囲気の中の充実したコンサートになりました。

サンティアゴのあとは、バスク地方のビルバオで数日間の休日を過ごした後に、フランス・オーヴェルニュに来ました。
ここクレルモン・フェランはオーヴェルニュ地方の中心都市で、昨年日本で共演したオーヴェルニュ室内管弦楽団の本拠地です。昨年の共演がきっかけとなり、今年の夏、彼らと一緒に8回のコンサートを弾くことになりました。
オーヴェルニュと言えば、「volvic」の水の里であり、フランスの中でも雄大な自然と牧歌的な風景が続くのが特徴です。ここの古くからの言葉で「Puy」と呼ばれている、なだらかな稜線の山(古い火山です)があり、そのあいだには広い牧草地が広がり、頭上には どこまでも拡がる大きな空があります。
コンサートは毎回、この地方の小さな村々の教会で行われ、その多くはロマネスク様式の古い教会です。豊かな自然に囲まれて、音楽を心から楽しんで演奏するオーヴェルニュ室内管のみんなと、音楽監督である指揮者のロベルトさんとの本番は、毎回本当に楽しいです。

今晩が、彼らとの今回のツアー最後の本番で、会場はMont-Doreという町の教会です。
彼らとの次の再会のチャンスを心待ちにしながら、今晩の演奏を楽しみたいと思っています!

イメージ サンティアゴでのコンサートを終えて
イメージ オーヴェルニュ地方の風景です
イメージ 大昔の氷河の通り道
イメージ このような教会でコンサートをしています
イメージ 指揮者のRoberto Forés Vesesさんと。彼との音楽上の「対話」は毎回とても楽しいです
イメージ コンサートの様子です

2013年~2010年

シュルツさんのこと2013年4月21日

世の中は、新学期や新年度になり、もうすぐゴールデンウィークも来ますね。
街を歩いていると、新しい制服を着た子供たちや、新しいスーツに身を包んだ新社会人の姿がなんとなく目につくような感じがします。

新しい出会いの時期でもありますが、そんな中にも悲しい別れがやってきます。
3月末、何回も共演をしてきたフルートのウォルフガング・シュルツさんが お亡くなりになりました。
初めてご一緒したのは1994年。それ以降、日本だけでなく、シュルツさんの住むオーストリアの各地をはじめ、フランス、イタリア、スイス、ドイツ、そしてハンガリーなど様々な場所で、たくさんの共演の機会に恵まれました。ウィーンでは、しばらくは私の大家さんでもあり、ご家族と共に、本当にたくさんの時間を過ごさせていただきました。
昨年の夏、草津の音楽祭で、コンチェルトと室内楽と、久しぶりに一緒に演奏したのが、最後の共演になってしまいました。
いつも太陽のような存在で、まわりを楽しく、そして幸せな気持ちにさせてくれる、大きな心の持ち主のシュルツさんに もう会えないことは、とても寂しいですが、たくさん残してくださった素敵な思い出を、これからも大切にして過ごしていきたいと思います。

先週の日曜日にはウィーンの1区の教会で、シュルツさんの追悼ミサが行われ、どうしても参加したくて急遽ウィーンに行ってきました。久しぶりに訪れたウィーンの街は、まぶしいくらいの晴天で迎えてくれて、まるでシュルツさんの人間そのもののようでした。
心からご冥福をお祈りすると共に、シュルツさんから教わった自然で楽しく、そして“大きな”音楽を続けていくことで、シュルツさんをずっと心に残していきたいと思っています。

来月には、シュルツ・ファミリーを中心とした、カメラータ・シュルツ・ウィーンの日本ツアーがあり、本当はシュルツさんと一緒にモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」を演奏することになっていました。この同じメンバーで10年ほど前にCD録音をしたモーツァルトを、シュルツさんと一緒に日本で演奏することが かなわなくなってしまい、本当に悲しいですが、ツアーは予定通り行われることに決まり、フルートのワルター・アウアーさんと共演することになりました。カメラータ・シュルツの皆と一緒にシュルツさんのことを想いながら、きっとシュルツさんが天国で望んでいるように、良いツアーにできれば、と思っています。

イメージ シュルツさんの追悼ミサが行われたミヒャエル教会の前から見たウィーンの街

2012年もあとわずかとなりました2012年12月31日

2012年も残すところ、あとわずかとなりました。
今年は、とうとうこの短信をほとんど書かないまま、1年が過ぎてしまおうとしています。

いろいろあった1年でしたが、今年もまた数多くの素敵な演奏の機会に恵まれたことに感謝をしています。
日本各地での演奏以外では、今年は香港、オランダ、ベトナムなどに行きました。

6月には、(ハーピストである母を除けば)私の唯一のハープの先生である、スーザン・マクドナルド先生をアメリカからお迎えし、先生がお書きになったハープの教則本(この教則本の日本語訳を、母と2人でやらせていただきました)を使っての公開レクチャーやマスタークラスを企画し、たくさんの方たちに聞いていただくことができました。

今年の年末は、比較的ゆったりとした時間を過ごし、久しぶりに会う友人との時間などを楽しんでいます。

まもなく2013年の幕開け。
新しい年もコンサートを通じて、沢山の皆さまとコミュニケーションさせていただくのを、楽しみにしています。

どうぞ良いお正月をお迎えくださいませ!

イメージ 6月に日本にお迎えしたスーザン・マクドナルド先生と
イメージ 今年はライブハウスでの演奏にも初めて挑戦しました!これはリハーサル中です
イメージ 最近はモーツァルト時代のシングル・アクション・ハープでの演奏から新たな刺激を受けています

お正月の東京巡り2012年1月9日

2012年になって、まもなく10日が過ぎようとしています。
この新しい年が平和で、そして明るいできごとを運んできてくれるように、願っています。

今年のお正月はあまり特別なことはせず、比較的ゆったりした時間を過ごしましたが、その中の1日だけ、ちょっとした東京巡りを楽しみました。
スタート地点はお台場。お台場からは水上バスで隅田川を上って、浅草まで行きました。普段は高速道路などから見ている隅田川を実際に船で進むと、いつもとはちょっと違う東京が見えてきました。隅田川にかかる いくつもの橋の、それぞれの佇まいを近くから観察したり、そこから拡がる様々な町並みを思い浮かべたりしているうちに、あっという間に1時間弱の「ミニ・クルーズ」が終わり、浅草に到着。浅草では、今も生きる伝統的な日本を感じながら、街歩きを楽しみました。

今年の私の仕事始めは、1995年のオープン以来ずっとお世話になっているJTアートホールの、恒例の「年賀状コンサート」です。今回は、いつものJTアートホールのプランナーの仲間の皆さんに加えて、若い方たちとの共演でお送りします。

今年もまたいろいろなホールで、たくさんの皆様とお目にかかることができれば、と思っています。
皆様にとっても素敵な1年になりますように・・・。

イメージ ここからスタート
イメージ 浅草に到着。こんな景色でした
イメージ 浅草寺の五重塔とスカイツリー

グランドティトン音楽祭2011年7月23日

今年の日本の夏は特に暑いですが、今日は涼しい場所からのお便りです。
アメリカのワイオミング州、グランドティトン国立公園に来ています。
子供の頃、アメリカに住んでいたのですが、ワイオミング州に来るのは今回が初めて。ここは人間よりも、バッファローやムースや熊の数のほうが多いのでは・・・、と思うほど、雄大な自然が広がっています。
今回はユタ州ソルトレークシティからレンタカーで5時間かけてここまで来たのですが、あらためてアメリカの広さを肌で感じることができました。

この国立公園の中で行われているグランドティトン音楽祭で、新しいハープ・コンチェルトの北米初演を弾いています。曲は、私の親友でもあるベルリン・フィルのハーピスト、マリー=ピエール・ラングラメのために書かれ、彼女が2009年にベルリンで初演をした、セバスチャン・クーリエの「Traces」です。

ここでのコンサートが終わると、次は3年に1回開かれる「World Harp Congress」に行くため、カナダのバンクーバーに向かいます。バンクーバーも初めて訪れる場所。バンクーバーでは、世界中から集まってくるたくさんのハーピストの友人たちとの再会を、楽しみにしています。

イメージ グランドティトン国立公園
イメージ まるで絵葉書から抜け出てきたような景色が広がっています
イメージ ドライブ中、どこまでも続く道。空が広いです!

あまりに大きなできごと2011年4月6日

東日本大震災から3週間あまり。
あの日以来、あまりのできごとの大きさの前で、自分の中でのいろいろな観念が変わってしまったような、そんな感じです。
被災地では、普通に「生きる」ことですら、ままならない状況が続いています。
コンサートで訪れた場所も、いくつかあります。
南相馬市では2008年にリサイタルをさせていただき、その時の地元の皆様のあたたかい歓迎が、心に残っています。南相馬市の現在の状況を考えると、言葉では到底表現できない、つらい気持ちでいます。
さらには、地震と津波だけでも大災害なのに、今は原発が心配です。原発の放射線は目に見えない上、すぐに影響が出るわけではないので、どう対処すべきなのか、私たちにはなかなか分かりづらいです。できる限りたくさんの正しい情報を集めて勉強し、自分が何をすべきかを考えていきたいと思います。

震災後しばらくは、ハープに向く気になれず、何ごとも手につかないような時間を過ごしていました。
それと同時に、まだそのタイミングではないと思いつつ、なにか私にも音楽で力になれることがあれば、できる限りのことをしたい、という気持ちでいました。

新しい月になり、少しずつ復興に向けて気持ちが切り替わっていく中、21日にサントリーホールで行われる「東北応援チャリティ・コンサート」に参加させていただくことになりました。コンサートでは、仙台フィルハーモニーの皆さんと、昨年の秋に仙台の「せんくら」で演奏したモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」を、その時と同メンバーで演奏します。
東北地方、そして仙台フィルの皆さんの1日も早い復興を祈りながらコンサートに臨みたいと思います。

イメージ 自然は変わらずに。今年も桜が咲き始めました

オリジナル楽器を使ってのモーツァルト2011年1月10日

新しい年になってから10日が経ちました。
東京は穏やかなお天気のお正月でしたが、そのほかの地域では大雪などで大変だったみたいですね。

私の2011年は、7日のモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」の演奏で始まりました。
今まで何回も何回も演奏してきたこの曲。今回は、久しぶりにオリジナル楽器を使ってのコンサートでした。普段のハープとは、弦の張り、ペダル操作、指使い、弾く時のタッチの強さ、すべてが違いますが、オリジナル楽器で弾くと、本来のモーツァルトのフレージングが自然にできる気がしたり、より微妙なニュアンスをつけて弾くことができ、楽器から教わることがとても多いです。
そんな楽器との親密な「対話」、そして素晴らしいフルートの有田正広さんとクラシカル・プレイヤーズ東京の皆さんとの「対話」を楽しみながら、素敵な初仕事を終えました。

今年も毎日元気でいられることに感謝をしながら、ハープ そして音楽と、楽しくじっくり関わりあっていくことができれば、と思っています。
皆様にとっても、素敵な2011年になりますように・・・!

イメージ 演奏後、有田さんと一緒に

初めてのイスタンブール2010年10月28日

もう来週から11月!
いつものことですが、時間が経つのは本当に早いです。

とても暑かった夏、そして秋になってもなかなか涼しくならなかった今年の東京ですが、ここ数日で急に気温が下がってきました。カラッと乾いた空気が、肌にひんやりと心地よいです。

先日、初めてトルコのイスタンブールに行ってきました。
アメリカの同じ先生のもとで勉強をしていたトルコ人のハーピストの友人が呼んでくれて、イスタンブールでリサイタルとマスタークラスを1回ずつしてきました。 文字どおり、ヨーロッパとアジアの境目で昔から栄えてきた大都市イスタンブール。
ボスフォラス海峡をはさんで、ヨーロッパ側とアジア側にまたがって広がる街です
。 活気に満ちた道を歩いていると、いろいろな顔をしている人たちがいて、歴史の深さと文化の奥深さを実感として感じました。
泊まっていた宿がアジア側にあったので、ヨーロッパ側へと橋を行き来するたびに、「Welcome to Europe」「Welcome to Asia」という標識があり、面白かったです。 最後の日には、イスタンブールを少しだけ観光できました。
トルコの友人と一緒にグランドバザールで買い物を楽しんだり、地元客で賑わう食堂で美味しいお昼を食べたりと、思い出に残る楽しい時間でした。 今回は短い滞在でしたが、ぜひ今度はゆっくり時間を取り、じっくりと旅をしたい国だな…、とつくづく思いました。

旅することは、本当に素敵です。旅は、身体の五感をフルに使い、視野を広くしてくれるだけでなく、時には自分自身の国や自分の文化を外から見つめるきっかけをも与えてくれます。
ハープを弾いているおかげで、世界のいろいろな場所に行くチャンスに恵まれ、本当に感謝しています。

イメージ ホールの前で。小さなオペラハウスでした
イメージ グランドバザール
イメージ 美味しい食堂

カザルスホールに花束を!2010年3月11日

東京はここのところ、気温の差の激しい日が続いていますね。
ぽかぽかだと思ったら、また冬に逆戻りで雪、という感じで、冬と春が闘っている様子が肌で感じられる今日この頃です。
それに合わせるかのようにこの時期は、卒業・入学・就職などと、人生のさまざまな転換期を迎えている方も多いのでは、と思います。

私も先週末、この3月で区切りを迎えるホールのためのコンサートがありました。
お茶の水にある、カザルスホールです。
カザルスホールは、サントリーホールがオープンした1986年の翌年の1987年、室内楽専用ホールとして、東京・お茶の水に誕生しました。2002年に日本大学の一部となってからもホールとしての機能を続けてきましたが、ついに今月いっぱいでの閉館が決まってしまいました。
先週末のコンサートは、以前ホールの総支配人をされていた方が主催され、「カザルスホールに花束を」と題されたコンサートでした。カザルスホールが誕生した時期が、私自身が音楽活動を本格的に始めた時期とちょうど重なっていたこともあり、1990年代には たびたび舞台で演奏をする機会がありました。先日のコンサートでは、そんな思い出深い場面の数々が頭の中を駆け巡る中、ヴィオラの今井信子さんとアコーディオンの御喜美江さんと共に、ホールのために心をこめて演奏することができました。当日は、昔の懐かしいスタッフの方々もいらしてくださり、久々の再会に感動したり、感慨深い日となりました。

時代が変わり、環境が変わっていくことは、時には仕方がないですし、必要なことでもありますが、それはいつでも、それまでのたくさんの大切な経験や歴史があってこその移り変わりでなければならないし、どんな時でも感謝の気持ちを大事にしつつ前に進んでいきたいな・・・、と感じた、そんな1日でした。

今月下旬には、上野の森で開催される「東京・春・音楽祭」の一環としてのリサイタルがあります。今朝、東京の桜の開花予想が出ましたが、リサイタルはまさに、その開花予想の日です!
春の空気いっぱいの中、フレッシュな気持ちで演奏ができれば、と思っています。

新しい年を迎えて2010年1月4日

新しい年を迎えてから4日。
明けましておめでとうございます。
今年はカレンダーの都合上、少し短いお正月で、今日から仕事始めという方が多かったのではないでしょうか?

なんと昨年の4月以来、この短信をご無沙汰してしまいました。
昨年を振り返ると、春まではアメリカで過ごし、そして6月には念願のクレメンス・ハーゲンさん(素晴らしいチェロ奏者で、ソリストだけでなくハーゲン・カルテットのメンバーとしても知られています)とのデュオ・リサイタル・ツアーが実現できました。秋からはドイツ、イタリア、イスラエルなどを訪れ、それぞれの場所で素敵な音楽体験に恵まれました。

そして、2010年。
新しいミレニアムを迎えたのが、つい最近だったような気がしていますが、もう10年経ったのですね・・。
最近は、時間が早く流れていくのにびっくりしている自分ですが、今年は物事を少しじっくり考え、豊かな時間を重ねていくことができれば、と思っています。

皆さまにとっても、今年が素晴らしい1年になりますように!

イメージ 近くの神社へ行きました

2009年~2007年

インディアナ大学2009年4月5日

日本では、桜がちょうど満開の時期を迎えているらしいですね。
この“らしいですね”の理由は、今、この短信をアメリカで書いているからです。
半年ほど短信を更新しないまま、時間ばかりが過ぎてしまいました。
2009年の前半は、私にとって新しいチャレンジの時間になっています。

今、私はアメリカ・インディアナ州のブルーミントンという街にいます。ここにはインディアナ大学があり、総合大学でありながら、ここのSchool of Musicは全米でも有数の音楽大学として知られています。私の唯一のハープの先生であるスーザン・マクドナルド先生は、長年ここの教授として、たくさんの素晴らしいハーピストを育てていらっしゃいます。
今回はマクドナルド先生が、大学から一学期のsabbatical(研究休暇)を取っているあいだ、私が先生の生徒たちを代わりに教えているのです。

期間は、1月末から今月末までの約3ヶ月。
私は普段、あまり教えることをしていないので、最初は不安でいっぱいでした。
自分自身、音楽大学に行った経験がないので、最初は新しいことばかりでしたが、残り3週間となった今では、12人の生徒それぞれの個性や性格も分かってきて、生徒たちと一緒に実り多い時間を過ごしています。
最初はとても長いと思っていた12週間分のレッスンも、あっという間に終わりに近づいてきました。

ここブルーミントンも、春を迎えています。
日に日にいろいろな花が咲き出し、街並みがたくさんの色であふれています。

イメージ ブルーミントンにも春が来ています
イメージ

深まる秋の空気の中で2008年10月24日

暑い夏が終わったあとの、実りの秋。
人間は自分が生まれた季節が一番好き、と聞いたことがあるのですが、12月生まれの私もどちらかというと、暑い時より寒い時期のほうが自分に合っているような気がします。

今月の前半は、コンサートが集中して続いたのですが、10月後半に入り、ひと段落しました。
今日は、以前からたびたび訪れている信州の蓼科高原からのお便りです。
ここでは東京よりひと足早く、深まる秋を味わっています。
キリッと澄んだ空気、青空に映る紅葉のたくさんの色のパレット、足もとの落ち葉のじゅうたん・・・。

ほんの数日間の滞在ですが、自然の奥深さを身体いっぱいに吸収して、東京に戻ります!

イメージ 秋の色彩でいっぱいの "自然のじゅうたん"

ルツェルン祝祭管のハープ・セクション2008年10月1日

気付けば もう10月です。
長らくご無沙汰してしまいましたが、今年も夏以降、旅が続く日々を送っていました。

夏の旅は、7月にオランダ・アムステルダムで行われた 第10回目のWorld Harp Congressへの参加で始まりました。8月から9月にかけては恒例のルツェルン(Lucerne Festival Orchestraへの参加)と松本(サイトウ・キネン・フェスティバルです)へ、そして9月半ばからは再びLucerne Festival Orchestraのメンバーとして、約2週間のウィーン滞在をしました。
初めての土地への旅は もちろんワクワクしますが、行き慣れた街に毎年決まって行くのも、いいものですね。

Lucerne Festival Orchestra(ルツェルン祝祭管弦楽団)への参加も、今年で5回目。8月のルツェルンの後、9月にはウィーンのムジークフェラインで10日間ほどのレジデンシーがありました。

今年のルツェルンのハープ・セクションは、4人! ベルリオーズの幻想交響曲をはじめ、2つあるプログラム両方に、4人全員で乗りました。
今年は、私以外のメンバーは全員たまたま初参加でしたが、リハーサルが始まってまもなく、すぐに4人で“one team”となりました。
国籍は、イタリア・イギリス・フランス・日本と全員異なり、その理由もあってか、4人とも少しずつ違うタイプの人間の集まりでした。そんな中、お互いの違いを楽しみつつ、抜群のチームワークによって、4人でたくさんmusic-makingをし、そしてたくさん一緒に笑いました。ウィーンでのコンサートが全て終わった後は、なんだか特別な時間が終わってしまったような、ちょっと寂しい気持ちになり、冗談で「今度4人で、ハープ・カルテットでも作ろうか?!」なんていう話になるほど、お互い別れを惜しみました。今は、ベルギー、ルクセンブルグ、そしてフランスと、それぞれのホームグラウンドに戻り、活躍していることでしょう・・・。

私はこれから年内は、日本国内での活動になります。日本の秋を楽しみながら、良い時間を過ごしたいと思っています。

イメージ ルツェルンの舞台裏で。全員でパチリ!
イメージ このように並んで演奏しました

充実した時間を過ごせると良いですね2008年3月3日

3月に入り、春の兆しがあちらこちらで感じられるようになってきました。

2月後半の広島公演も無事終わり、これから夏まではめずらしく、かなりののんびりペースになります。
これを機に、楽譜の整理や新しいレパートリーの開拓など、気になっていながらついつい後まわしにしてきたことに、時間を使えれば、と思っています。

これからは卒業・就職・転勤・入学など、人生の区切りの時期を迎える方も多いと思います。お互い、充実した時間を過ごせると良いですね。

イメージ 先日行った大田区の池上梅園で。きれいに咲いていました

JTホールでの室内楽2008年2月1日

2008年になってから早1ヶ月。まもなく立春を迎えますが、今年の東京は久しぶりに、しっかりと寒い冬ですね。子供の頃、学校に行く途中の公園で、霜柱の上をシャリシャリと音をたてながら歩くのが楽しかった思い出がありますが、今年は東京でも霜柱ができているのでは・・?

長らく短信を書かないまま、時間が過ぎてしまいました。
私の2008年は例年同様、いくつかのニューイヤー・コンサートで幕を開け、1月最後の本番は、ホールのオープン以来プランナーを務めさせていただいている、JTホールでの室内楽公演でした。
今回の内容は、フルート・ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロとの五重奏を中心にしたプログラム。フルートが活躍するジョリヴェ作曲「リノスの歌」をメインに、モーツァルトやシューベルトの作品、そしてピエルネ・ドビュッシー・イベールなどのフランスものを並べた、充実した内容のプログラムで、リハーサルにもずいぶん時間をかけました。
リハーサルと本番を通して、5人で微妙な音色の世界を“探検”しながら、最後には全員で一つのものを作り上げていく、という幸せな過程を体験できました。共演してくださった、フルートの佐久間由美子さん、ヴァイオリンの川田知子さん、ヴィオラの鈴木康浩さん、そしてチェロの山本裕康さん、本当にありがとうございました!
当日は、NHKのテレビ収録が入っていたので、放映日程が決まり次第、このHP上でもお知らせしたいと思っています。

このような手のかかる公演の企画を長期にわたり、同じホールで続けさせていただけるということは、本当に嬉しいことですね。

今年もこのようなコンサートを一つ一つ大切にしながら、ハープと共に充実した時間を過ごすことができれば、と願っています。
少し遅くなりましたが、どうぞ今年もよろしくお願いいたします。
そして、皆様にとっても2008年が実り多き一年になりますように!

イメージ JTホールでの公演後みんなで打ち上げをしました!

松本、そして富山2007年9月18日

もう9月も半分過ぎましたが、今年は残暑が厳しいですね。
"暑さ寒さも彼岸まで" ということで、この残暑もあと少しというところでしょうか・・?

前回の短信後、1ヶ月のヨーロッパ滞在から日本に帰国し、9月の始めには松本でサイトウキネン・オーケストラに参加してきました。
今年は1週間だけの比較的短い滞在でしたが、その中でリハーサルと3回の本番があり、充実した楽しい時間でした。

松本に続いて、富山にも行き、室内楽のコンサートがありました。ハープの名曲であるラヴェルの「序奏とアレグロ」を中心に、気心知れた共演者の皆さんと一緒に、多彩な組み合わせのプログラムを演奏することができました。

松本と富山では暑い中にも、秋の気配を感じることができ、気持ち良い時間でした。
これからは、秋も本番。
「食欲の秋」や「芸術の秋」など、いろいろありますが、皆さまもどうぞ素敵な秋のひとときを!

イメージ 富山の帰りに立ち寄った飛騨高山で、咲いていました

4回目のルツェルン音楽祭2007年8月19日

前回は、アメリカに向かう飛行機の中からの短信でしたが、今日はスイスのルツェルンからです。

2003年からアバドさんの呼びかけによって始まったLucerne Festival Orchestra(ルツェルン祝祭管弦楽団)も、今年で5回目を迎えました。私は1年だけお休みしたので、今年で4回目の参加になります。今年はまずベートーヴェンの第九で音楽祭の幕開けをし(私は客席で聴いていたのですが、本当に素晴らしい演奏でした!)、昨日と今日がマーラーの交響曲第3番です。
リハーサルも含めると、ルツェルン滞在は約2週間。集中したリハーサルの時以外は、ゆったりとした時間を過ごしていました。お天気が良い日には、少しだけ山歩きをしたりもしました。街を少し離れただけで、森や山があり、たくさんの散歩道が用意されているので、その日の気分によっていろいろな所に行くことができます。犬を連れたり、子供を連れたりと、皆がそれぞれの楽しみ方で自然に馴染んでいることは、とても素敵だと思います。

そのルツェルン滞在も、明日で終わりです。ルツェルン祝祭管弦楽団がイギリスのプロムスに出演するので(プログラムはマーラーです)、ロンドンに向かいます。
プロムス独特の熱狂的な雰囲気の中で、適度な緊張感を持ちつつ楽しんで弾くことができれば、と思っています。

イメージ 第九のコンサートの前に
イメージ そのまま絵葉書になりそうなルツェルンの街です

セルビア訪問2007年7月3日

前回の短信から、なんと半年近く経ってしまいました。
2007年も半分以上が過ぎましたが、おかげさまで元気に過ごしてきました。4月までは国内での活動だったのですが、5月に入ってからは、海外に行くことが多くなりました。
5月から行った国を挙げていくと: セルビア、クロアチア、ドイツ、スイス、オーストリア。
そして今は、アメリカに向かう飛行機の中で、この文章を書いています。

特にセルビアは、今まで縁のなかった国なのですが、地元のハープ協会からのお招きで、訪問が実現しました。つい最近まで大変な状況の中にあった地域ですが、セルビアで出会った人たちは皆、人なつっこくて素敵な人たちばかりでした。平和な日本で暮らしてきた私にはなかなか実感できませんが、現地を訪ねたり、少しばかり本を読んだりして、この地域のもつ長い長い歴史と、今でも続く様々な人たちの複雑な想いを、ほんの少しだけですが肌で感じることができ、私にとっては貴重な体験でした。

今日は、アメリカのインディアナ州に向かっています。
明日から開かれる、USA International Harp Competition の審査員を務めるためです。このコンクールは、私の先生であるマクドナルド先生が始められたもので、今年は7回目を迎えます。
これからの10日間あまりは、自分自身が演奏するのとは全く違う神経を使うことになりますが、自分の耳と目と心をできる限り素直に開いた状態で、参加者全員の演奏に集中することができれば、と願っています。

イメージ セルビアでのリサイタル風景
イメージ 後ろに見えるのはサヴァ川とドナウ川。セルビアの首都ベオグラードで2つの川が合わさります

2007年になってから、そろそろ1ヶ月2007年1月29日

2007年になってから、そろそろ1ヶ月が過ぎようとしています。
今年の東京の冬は、気持ちの良い晴れの日が多く、あまり寒くないように感じます。

先週は、東京・上野の美術館で、NHK教育テレビの『新日曜美術館』の収録があり、ゲストとして番組に参加させていただきました。普段とは違う経験に緊張をしながらも、とても充実した時間を過ごすことができました。実際の絵を前にしての収録だったので、専門家のお話を聞きながら大好きな絵を近くから見ることができ、私にとっては貴重な時間でした。久しぶりに、大学時代のことを思い出したりもしました(大学では、西洋美術史が専攻だったので・・)。
この『新日曜美術館』は、2月11日放送予定です。よろしかったら、ぜひご覧になっていただければ、嬉しく思います。

昨日は、2002年以来、毎年参加している愛知県稲沢市のホールでのコンサートがありました。このコンサートは普段の公演と少し違い、4歳以上の子供なら誰でも入ることができ、しかもチケット代は \1,000 と、破格のお値段なのです! 前半では、様々な編成の室内楽、そして後半では、ナレーション付きの音楽劇を皆で演奏します。今までは、「白鳥の湖」や「ヘンゼルとグレーテル」、そして「魔笛」などを取り上げてきましたが、今年はメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」でした。今年もまた、この日のために用意された寺嶋陸也さんの素敵な編曲を皆で演奏しました。
残念なことに、この企画は今回の公演でいったんお休み、とのことですが、気のおけない共演者の皆さんとのコンサートは、とても楽しいものでした。
この稲沢市には、“はだか祭り”で有名な、国府宮(こうのみや)神社があります。これまで毎年稲沢市を訪れていながら1回も行ったことがなかったのですが、今回はコンサートの日の朝、初めて行ってきました。国府宮神社は、本当に地域に根ざした場所で、地元の方たちが、お散歩やウォーキングの途中に立ち寄り、お参りされていました。東京のような大都会では ついつい忘れがちなそんな雰囲気が、とても印象的でした。

これから2月と3月は、少しのんびりペースになります。今年もまた楽しみながら、充実したコンサートを重ねていきたいと思っています。

イメージ 2/11 放送予定
『新日曜美術館』のテーマは、オルセー美術館展でした
イメージ 稲沢の国府宮神社

2006年

蒔絵ハープのお披露目、『ライラ小景』の新作初演2006年12月27日

2006年も残すところ、あと少しとなりました。
皆様にとって、今年はどんな一年だったのでしょうか?
私にとっては、あっという間に一年が過ぎていったように感じますが、よく考えると、とても充実した時間でした。
3回のリサイタル・シリーズで始まった2006年。そして、その第1回目に合わせて、このホームページを立ち上げることもできました。

その2006年の仕事納めは、クリスマス・イブに行われた、ちょっと普段とは違う特別なコンサート。
左の写真は、そのコンサート後に写したものですが、この楽器の装飾は何に見えるでしょうか? これは、日本の伝統工芸である、蒔絵のハープです。漆の芸術家である室瀬和美さんが今年、このハープの装飾を、プレゼントして下さいました。私は夏前に、蒔絵を施すのにふさわしい形の新しいハープを運良く手に入れることができ、その後 約4ヶ月を経て、主に柱の部分に素敵な装飾が完成しました。現在この楽器は、京都にある大山崎山荘美術館の特別企画展で展示されています。
今回はこの楽器のお披露目も兼ねた、美術館での特別コンサートでした。ほとんどまだ弾きこんでいない新しいハープにもかかわらず、良い音で鳴ってくれて、アットホームな雰囲気の中、気持ち良く演奏ができました。

京都でのコンサートの前日には、毎年恒例となっている、横浜のフィリアホールでのリサイタルもありました。今年は、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をテーマに作曲された、吉松隆さんのハープ・ソロ曲『ライラ小景』の新作初演もあり(フィリアホールの委嘱で生まれた作品です)、大好きなフィリアホールの響きの中で、思い出深い一晩となりました。

今年もあと4日。年末年始は、少しハープから離れた時間を過ごそうと思っています。のんびりと過ごしたいところですが、まだこれから年賀状書きや、家の整理などが待っています。皆様も、どうぞ良いお年を!

イメージ 京都でのコンサート後に。ハープと共に
イメージ 特別な蒔絵螺鈿ハープ『彩韻』。下の部分にもこんな素敵な装飾があります

久しぶりのカリフォルニア2006年10月6日

しばらくご無沙汰しているうちに、もう10月! 時間が経つのは、本当に早いですね。

夏はいつもそうなのですが、今年の夏も旅が続きました。

その中でも印象的だったのが、約20年ぶりにアメリカのカリフォルニアをゆっくり訪ねたことです。6歳から約3年半、ロサンゼルスに住んでいた私にとって、カリフォルニアはとても懐かしい場所です。楽しい思い出ばかりのアメリカ生活は、子供だった私にとって良い影響をたくさん与えてくれました。ハープを始めたのも、学校生活を始めたのも、ロサンゼルス。明るい太陽の下、のびのびと過ごした3年間で、それまでちょっと神経質で体の弱かった私の体質と性格も変わったのでは、と思います。
今回は、サンフランシスコで行われた、アメリカ・ハープ協会のナショナル・コンファレンスで演奏するための旅だったのですが、その後にはロサンゼルスに立ち寄り、昔住んでいた界隈を訪ねたり、当時のピアノの先生にお会いしたりと、本当に嬉しい時間を過ごしました。

そして8月にはスイスのルツェルンへ。2年ぶりに、ルツェルン祝祭管弦楽団にオーケストラの一員として参加し、アバドさんの指揮のもと、素晴らしいメンバーと共に、至福の音楽体験をさせていただきました。ルツェルン音楽祭の期間中には、マリー=ピエール・ラングラメさん(ベルリン・フィルの首席ハープ奏者で、私の大切な仲間です)とのデュオ・コンサートもあり、マリー=ピエールとは昨年暮の日本ツアー以来、嬉しい再会でした。

日本国内でも、小澤征爾さんの音楽塾オーケストラへの参加、松本のサイトウキネン、そして武生国際音楽祭や小淵沢の音楽祭など、いろいろな場所にお邪魔しました。

これからはしばらく、少し落ち着いて日本に滞在することになります。

来週、「ルツェルン・フェスティバル・イン・東京」がサントリー・ホールで始まります。夏のルツェルンでのマーラーの素晴らしい音楽体験を、東京でまた味わえることを、今は心待ちにしているところです。

イメージ サンフランシスコにて。私の唯一のハープの先生であるスーザン・マクドナルド先生、そして母と一緒に
イメージ ロサンゼルス、昔のままのレッスン室で。ピアノのRejto先生と
イメージ ルツェルンでのリハーサル。コンサート会場は教会でした

紫陽花の花2006年6月16日

東京では、梅雨空が続く毎日です。湿気の多いこの時期、どの楽器にとってもそうだと思いますが、ハープにとってもかなりイヤな季節になりました。木が湿気を吸って楽器全体が響かなくなるだけでなく、ハープの弦の大部分は今でもガット弦(羊の腸が原料です)を使っているので、温度や湿度の変化にとても敏感なのです。もともとチューニングに神経を使う楽器なのですが、この時期はいつもにも増して、気を遣わないといけません。
昨夜は、宇都宮でリサイタルがありました。コンサートの始まる頃は、あいにくの雨。案の定、ステージ上はかなりの湿度でしたが、たくさん集まってくださったあたたかいお客様のおかげもあり、自分自身でもかなり楽しみながら無事に終えることができました。

こんな時期ですが、イヤなことばかりではないです。今いろいろな場所で、紫陽花の花が目を楽しませてくれています。家のそばにも咲いていたので、写真を撮ってみました。アジサイとガクアジサイ、とてもきれいですね。

紫陽花と言えば、今月の4日に佐賀県の有田で行ったリサイタルの副題が「あじさい色の時間とともに」というもので、当日のステージ上には、とても素敵な紫陽花のフラワー・アレンジメントが施されていました。

イメージ 家の近くに咲く紫陽花たち

モーツァルトの生誕250年2006年6月3日

またしばらく短信を書かないうちに、6月になってしまいました。
今年は、モーツァルトの生誕250年という記念の年なので、やはりモーツァルトを演奏する機会がかなり多いです。先月1ヶ月間だけでも、5月の「ラ・フォル・ジュルネ」や宮崎の音楽祭、そして月末には東京のオペラシティで、NHK交響楽団の皆さんと演奏をする機会に恵まれました。

ハーピストにとっては本当に貴重な、モーツァルト唯一のオリジナルである「フルートとハープのための協奏曲」。
今までもこの曲を本当にたくさんの回数、演奏してきましたが、それでも毎回演奏をするたびに“音楽をやっていて本当に良かったなぁ・・”と、私を幸せな気持ちにさせてくれる、心の近くにある大切な1曲です。

オペラシティでのフルートは、佐久間由美子さんでした。
佐久間さんとの初めての共演は1986年の夏だったので、私たちの付き合いも、もう20年になりました! 初共演以来、公私共々仲良くお付き合いをさせていただいていますが、今回もまた楽しい共演になりました。

イメージ 終演後、楽屋の前で佐久間由美子さんと

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2006年5月11日

ゴールデンウィークも過ぎ、5月半ばになりました。今年は休みが長かったこともあり、海外に行かれた方も多かったのではないでしょうか?

ゴールデンウィークの後半はほぼ毎日、有楽町の東京国際フォーラムに通う日が続きました。「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン ~熱狂の日~」音楽祭2006に行くためです。昨年、本場のナント市(フランスです)から日本にやってきたこの音楽祭の今年のテーマは、“モーツァルトと仲間たち”でした。
幸いお天気にも恵まれ、国際フォーラム全部を使ったこの大イベントは、毎日たくさんの人で大賑わいでした。コンサートを聴くだけでなく、ワークショップに参加する人、ショップで買い物をする人、マスタークラスを聴く人、あるいはただ雰囲気を楽しみながら食事やお茶をする人。どんな人にとっても楽しめる要素がたくさん盛り込まれた、楽しい“お祭り”でした。私自身の出番は2回だけでしたが、それ以外に、他のコンサートにも足を運んだりして、存分に楽しみました。

来週は、久々に宮崎の音楽祭に参加予定です。前回の参加は1998年だったので、なんと8年ぶりになります。一足早く、南国の夏の空気を味わえるのを、心待ちにしています。

イメージ 東京国際フォーラムにて、ポスターの前で

3回のリサイタルシリーズが無事終了2006年4月12日

時間が経つのは早いですね。しばらくこの短信を書かないまま、気付いたら4月になってしまいました。

1月から始まったリサイタルシリーズの最終回および追加公演が終わり、それから約1ヶ月が過ぎました。文化会館小ホールとサントリー小ホール、という2つの異なる空間で同じプログラムを2回弾き、どちらも自分にとって特別な日となりました。このプログラムは、ハープのオリジナルの名曲を中心としたものだったので、ハープが最も自然な形で響き、3回の中では一番リラックスをして演奏に臨むことができたように思います。
3月11日の追加公演後には、今回のリサイタルシリーズを一緒に作り上げて来て下さった梶本音楽事務所のスタッフと、打ち上げを行いました。皆さんには、今回のリサイタルシリーズで本当にお世話になり、一つの大きなプロジェクトを終えた喜びを共に味わうことができたこのひと時は、私にとって素敵な“フィナーレ”となりました。

今回のリサイタルシリーズは、私にとって本格デビューから20年という、節目の時期に行った企画でした。そんなこともあり、演奏曲目などを別ページに、記録として残したいと思います。

リサイタルシリーズが終わってひと息をつき、3月末からつい先日までは、ウィーン・フィルハーモニーの首席フルーティストであるウォルフガング・シュルツさんと一緒に、モーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」を4回演奏するために、ヨーロッパに行ってきました。伴奏してくれたオーケストラは、シュルツさんの家族および仲間たちで編成された「カメラータ・シュルツ」。レコーディングも行った気心知れた皆さんとの、楽しい旅行でした。コンサートは、ウィーンの郊外で2回と、フランスのパリとストラスブールで1回ずつ。幸いお天気にも恵まれ、合間には観光をする時間などもあり、素晴らしい気分転換になりました。
旅行の最後に再び立ち寄ったウィーンでは、アーノンクールさん指揮ウィーン・フィルの演奏会をムジークフェラインで聴くこともでき、今回の約10日間の旅は、本当に充実した良いものになりました。

今月はこれからしばらくリラックス・モードになりますが、ゴールデンウィークには、楽しい「ラ・フォル・ジュルネ」に参加をする予定です。面白さ満載の会場での演奏を、楽しみにしています。

イメージ 打ち上げにて
イメージ パリの演奏会場、シャンゼリゼ劇場
イメージ パリのコンサート後、シュルツさんと乾杯

リサイタルシリーズの第2回目2006年2月13日

先週の木曜日、リサイタルシリーズの第2回目「新しい響きの魅力」が終わりました。今回の会場は、第1回目の紀尾井ホールに比べると、約半分の座席数のトッパンホール。どんなピアニッシモの弱い音でもクリアに客席に届くトッパンホールでのリサイタルは、私にとって身の引き締まる空間での演奏となりました。

普段のリサイタルでは、ハープのもつ様々な“顔”をなるべく多く紹介したいという思いをこめて、一晩のプログラムを組みます。しかし、今回のシリーズのように、毎回テーマを絞って行うリサイタルでは、そのテーマに即したハープの側面に向き合い、自分自身をより深く集中させることができるので、そのことが自分にとって、かえって新鮮に感じることのできる経験でした。

この写真は終演後、作曲家の細川俊夫さんとヴィオラ奏者の今井信子さんと一緒に写したものです。今井さんはこの日の朝、ヨーロッパから一時帰国され、リサイタルにいらして下さいました。約20年前の初共演から始まり、武満徹さんのトリオの初演も一緒にさせていただいた今井さんが聴きにいらして下さったのは、本当に嬉しかったです。

トッパンホールでのリサイタル後、ほとんど休む間もなく、名古屋のスタジオ・ルンデでのリサイタルが日曜日にありました。親密感のある空間で、こちらは、ハープのたくさんの“顔”を一回のプログラムで表現をする、通常のリサイタル・プログラムでした。1981年のオープン以来、四半世紀にわたって、数多くの優れた室内楽のコンサートを企画されてきたスタジオ・ルンデは、今年の6月に幕を閉じます。今でこそ日本でさかんになってきた室内楽ですが、まだ馴染みが薄かった25年前から室内楽にスポットライトを当て、今日まで継続してこられたことは、本当に素晴らしいことだと思います。

アットホームなあたたかい雰囲気の中、心に残るリサイタルとなりました。

3月1日、文化会館小ホールでのリサイタルシリーズの最終回は、おかげさまで完売となり、3月11日の夜、サントリー小ホールで、同じプログラムでの追加公演をさせていただくことになりました。最後は、ハープのオリジナル名曲を集めた華やかなプログラムです。ぜひたくさんの皆様に再びホールでお目にかかれることを、今から楽しみにしております。

最後になりましたが、今回のリサイタルシリーズに関して数多くのご感想を、このホームページを通して、いただきました。興味深く読ませていただいており、いずれお返事も書きたいとは思っているのですが、まずはこの場をお借りして、お礼を申し上げたいと思います。

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リサイタルシリーズの第1回目2006年1月15日

昨日、リサイタルシリーズ第1回目の紀尾井ホールでのリサイタルを、無事終えることができました。聴きにいらして下さった方には、あらためてお礼を申し上げたいと思います。こちらの写真は終演後、楽屋の前で撮ったスナップ写真です。

ソロ・リサイタルのプログラムを、ピアノ曲だけで構成するのは、私にとって初めての試みでした。それだけに、昨日の本番を迎えるまでは自分自身、どのような結果になるか分からない部分があったのですが、おかげさまで自分でも納得のいく内容になったと思います。どの曲にも思い入れがあり、好きな作品ばかりだったので、その中からどれかだけを選ぶのは難しいのですが、何曲か取り出してみると、前半2曲目のモーツァルトの幻想曲は、美しい上、特にハープの響きに良く合っていると感じました。サティは、初めからハープに合うことは分かっていたのですが、紀尾井ホールの素敵な空間がたくさんのインスピレーションをその場で与えてくれ、あらためてとても自由な気持ちで演奏することができました。ブラームスの間奏曲は、ずっと弾きたいと思っていた作品の一つだったので、本当に幸せな気持ちでした。

まず、私にとって理想的なパートナーである“2人”のハープたち(昨日は、前半と後半で楽器を変えました)に感謝をし、そしてその次には、あの紀尾井ホールでの2時間を共有してくださったお客様の皆様に感謝したいと思います。

これからこのリサイタルシリーズは、第2回目のトッパンホール(2月9日)、第3回目の東京文化会館(3月1日)と続きます。今日は勝手に自分で“休息日”にしてしまいましたが、明日からは気持ちを切りかえて、2月の現代作品に取り組もうと思っています。

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ホームページをオープン!2006年1月13日

このたび、ようやくホームページをオープンすることができ、嬉しく思っています。ここ数年間でインターネットやメールがものすごい勢いで発達し、私も最近は、両方にお世話になる毎日を送っています。

現時点では、まだ準備中の部分がいくつかありますが、少しずつアップしていくつもりです。英語版についても、もう少しお待ちいただければ、と思います。

ここの『短信』コーナーでは、日々のコンサートのことなどを、エッセイ風に書いていきたいと思っています。どれだけ頻繁に書けるか分かりませんが、時々訪ねてくだされば、嬉しく思います。

今日は、明日の紀尾井ホールでのリサイタルを前に、最終的な準備をしています。明日はあいにくお天気があまり良くないみたいですが、多くの方々に紀尾井ホールのステージからお会いできることを、楽しみにしています。

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